高圧噴射撹拌年表
- 1969年~(黎明期)高圧噴射注入工法
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単管式工法(CCP工法等)
単管式噴射工法は、はじめ高圧噴射注入工法と呼ばれ、もともと薬液注入工法の欠点を補うために生まれた工法です。
従来から薬液注入は、土質の状況により、実際に注入材の浸透範囲や改良効果を安定させることが難しいという問題がありました。
そこで1969年、薬液注入の設備に、高圧ポンプを導入し、注入材(グラウト)を高圧で注入・噴射し、地盤を切削撹拌して改良体を造る工法が誕生しました。[ 用途 ]
① 地盤の支持力向上
② 開削などの土留め壁や止水壁
③ シールドの発進・到達防護のための土圧・水圧への抵抗
④ トンネル切り拡げ時の地盤の補強・安定向上
当時の工法は、品質の信頼性が低いため仮設仕様で活用されていました。工法名 CCP工法(単管工法) 噴射機構 [単管]
単管でグラウトのみを噴射する方式改良径 500mm 対象地盤 軟弱地盤 周辺地盤への影響 あり 特徴 混合充填
- 1970年~(発展期)高圧噴射撹拌工法
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二重管式工法(JSG工法等)
単管式噴射工法の普及に伴い、改良径の拡大がより要求され、地盤内での噴射圧力の低下を防ぐため、グラウトと圧縮空気を同時に噴射する方法が開発されました。
グラウト噴射の内管と、圧縮空気噴出の外管を具備した工法が、二重管式高圧噴射撹拌工法です。
改良範囲は1,000-2,000mm。工法名 CJG工法(三重管工法) 噴射機構 [三重管]
水と圧縮空気を噴射、グラウトを充填改良径 2000mm 対象地盤 軟弱地盤~普通地盤 周辺地盤への影響 なし 特徴 撹拌充填 三重管式工法(RJP工法、CJG工法等)
二重管式高圧噴射撹拌工法はグラウトを地盤中に多量に送り込むと、周辺地盤への影響が大きくなるので、これをを改善して余剰泥土をスムーズに排除する目的で、さらに水噴射を加えた三重管式高圧噴射撹拌工法が開発されました。
改良範囲は2,000-3,000mm。工法名 RJP工法(三重管工法) 噴射機構 [三重管]
水と圧縮空気を噴射、グラウトと圧縮空気を噴射改良径 3500mm 対象地盤 軟弱地盤~普通地盤 周辺地盤への影響 なし 特徴 揺動機構を取入れ、扇形改良が初めて可能になった。 - ・創業者 羽田中は噴射撹拌工法の流動化剤を開発、供給
- ・大翔化学研究所設立
- 近年
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- 1992年~L-Dis工法
- 1993年~スーパージェット工法
- 1994年~クロスジェット工法
- 1999年~JEP工法
- 2002年~セパレートジェット工法
- 2004年~メカジェット工法
- 2007年~ラテラルジェット工法
- 2008年~マルチジェット工法
- 2011年~V-JET工法
- 1993年無収縮モルタルの開発、供給
- 1999年モルタル用遅延剤の開発、供給
- 2007年0PT-JET用混和剤開発
- 2009年OPフローシリーズの開発、供給
- 2011年ソイルセメント用流動化剤の開発、供給
- 2009年~(近年)OPTジェット工法
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低排泥低変位噴射撹拌工法
OPTジェット工法大口径化、スピード化
仮設仕様に加えて本設仕様にも多様化[ 工法の高度化 ]
高速施工、排泥減量化で経済的な施工が可能に。
短時間でより効率的な切削。[ 大口径化 ]
改良体積あたりの固化材量を大幅に抑え、効率的に地盤の液状化対策や強化が行える工法が近年登場してきています。
これらの工法の中で、OPTジェット工法は必要改良径の造成にあたり、噴射管の引上げ速度と噴射量、時間、噴射圧力を調整することで、経済的で効率の良い施工を可能にし、近年シェアを延ばしています。なお、スーパージェット工法、JEP工法は大口径化(5m超)で開発されました。
その後、類似のV-Jet工法(2011年〜)が開発されました。[ 施工環境への優位な適用 ]
既設構造物の改良では、空頭制限箇所や狭隘箇所など限られたスペースでの施工が要求されるため、噴射撹拌工法は適用上優位です。
機械の小型化やロッド直径の小口径化、噴射装置の高性能化も進められました。
また、狭隘地で特定の方向にのみ、改良体を造成したり、地下空間で水平方向に地盤改良を実施するなど、施工条件への適応性を目的とした工法も開発されています。耐震目的、耐久性目的等の本設利用
改良品質・効率向上により、本設利用が増加しています。工法名 JEP工法(三重管工法) 噴射機構 [三重管]
水を噴射、グラウトと圧縮空気を噴射改良径 4000mm 対象地盤 軟弱地盤~普通地盤~硬質地盤 周辺地盤への影響 なし 特徴 - 工法名 OPTジェット工法(三重管工法) 噴射機構 [三重管]
水を噴射、グラウトと圧縮空気を噴射
圧力ロスの少ない噴射ヘッドと独自理論の開発によって、
さらなる効率化・経済性を実現し、適用範囲を開拓改良径 3500mm 対象地盤 軟弱地盤~普通地盤~硬質地盤 周辺地盤への影響 なし 特徴 より効率的な高速施工を可能にし、かつ高品質な改良体を造成
参考文献
記事・論文名 | 著者 | 掲載誌 |
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注入工法と高圧噴射撹拌工法の技術動向と液状化対策 | 木下吉友、荒木進、宇梶伸 | 土木技術 51(10) 1996-10 p.77~84 |
大口径高速施工の高圧噴射撹拌工法 V-JET工法の概要と適用例 |
山崎淳一 | 土木施工 53(5)(通号 665) 2012-05 p.26-29,1 |
新しい液状化対策工法(吸水型振動棒締固め工法、自由形状・大口径高圧噴射撹拌工法)の東日本大震災における効果 | 手塚広明 | 土木技術 67(9) 2012-09 p.38-43 |
高圧噴射撹拌工法の機械小型化と適応事例 | 川村淳 | 地盤工学会誌 60(2) 2012-02-01 p.42-43 |
ジェットグラウト技術 純然たる日本国産の技術の現状 |
柴崎光弘 | 土木施工 46(12)(通号 597) 2005-12 p.29~34 |
高圧噴射撹拌工法による改良体形成の実態調査 | 三井隆、池田昭彦、吉川正、浜田清一、吉武勇、中川浩二 | 土木学会論文集(742) 2003-09 p.203~208 |
高圧噴射撹拌工法の変遷と今後の展望 (小特集テーマ:地盤改良の変化・変遷) |
中西 渉、中澤 重一 | 土と基礎 : 地盤工学会誌 / 地盤工学会「土と基礎」編集委員会 編 54(7)(通号 582) 2006-07 p.10~12,図巻頭1p |
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